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緩和ケア科について
皆さんは、緩和ケアについてどんなイメージをお持ちですか?
十分に理解されているという方もおられると思いますが、一方でがんが進行した時に受けるものだから知りたくもないなとお考えの方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。何となくつらさを和らげるのかなと想像はつくけど、実際はどういうことなのかわからない方も多いのではないでしょうか。今回は、緩和ケアについて説明させていただきます。
患者さんやご家族はどんなつらさに直面するのでしょうか。つらさ自体は、ひとりひとり違いますし、また病状によっても変わると思います。がん患者さんを例としてあげると、がんによる痛みなどの症状ばかりではなく、がんと診断されたときのショックや気持ちのつらさ、抗がん剤の副作用や手術などの治療に伴う痛みやつらさ、また再発や転移がわかったときは、不安やうつ状態が現れるかもしれません。さらに、仕事の問題や経済的な問題、家族関係の問題も起こりえます。このように、決して進行した状態だからつらさが大きいわけではなく、診断された時から様々なつらさを感じる可能性があります。今までのがん医療の考え方では、がんを治すということに関心が向けられ、病院でもこれらのつらさに対して、十分な対応ができていませんでした。しかし、最近では、患者さんがどのように生活していくのかという療養生活の質も、がんを治すことと同じように大切と考えられるようになってきています。
緩和ケアとは
がんの治療とともに、患者さんやご家族の生活の質の向上が求められるなか広がってきたのが緩和ケアです。『緩和ケアとは、重い病を抱える患者やその家族ひとりひとりの身体や心などの様々なつらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケアである』とされ、さらに短く一言で表すと、『病気に伴う心と体の痛みを和らげること』となりますが、いずれも世界保健機関が2002年に発表した緩和ケアの定義がもとになっています。その定義では、病気の時期を問わず、がんばかりでなく、命を脅かす病気によるつらさに直面している患者さん本人とそのご家族に対して、そのつらさを少しでも和らげることで、日常生活をもっと楽にすごしてもらえることを目的とすることが記されています。患者さんを、がんの患者さんと病気の側からとらえるのではなく、その人らしさを大切にし、身体的・精神的・社会的・スピリチュアル(霊的)な苦痛を全人的苦痛ととらえて、早期よりつらさを和らげる医療やケアを積極的に行うことで、患者さんとご家族の療養生活の質をよりよいものにしていくことができると考えています。
当院における緩和ケア
緩和ケア外来では、主治医と連携をとりながら、がんに伴う痛みや不安などの苦痛症状の緩和を行っています。入院中の患者さんには、緩和ケア科医師・緩和ケア認定看護師・薬剤師などからなる緩和ケアチームで対応しています。緩和ケアチームは、からだやこころのつらさを緩和する方法を、担当医や担当看護師と一緒に考えるチームで、その方らしい療養生活を支援することを目的としています。緩和ケアチームのサポートが必要だと担当医や担当看護師などが判断した時、または、ご本人やご家族からの希望があった時に、緩和ケアチームへの依頼が出され、病棟で診察をします。診察結果を踏まえて、担当医や担当看護師らと相談の上、薬やケアの方法など調整するサポートをしていきます。
また、病気の進行によって生じる様々なつらさを和らげるための治療とケアを提供する専門の病棟として、緩和ケア病棟を開棟する予定です。
がんのような身体や気持ちのつらさをもたらす病気になったとしても、市民の皆様が安心して過ごしていただけるように、院内はもとより、地域病院・診療所・訪問診療の先生方、訪問看護師さんや介護スタッフ、薬剤師さんやケアマネージャーさんなどと、密な連携を図りながら、つらさを少しでも和らげていければと考えています。
当院には緩和ケア認定看護師が2名在籍しています。以下、お話を聞きました。
緩和ケア認定看護師の浦田です。「緩和ケア」と聞くと「=終末期」と連想される方もまだ多いかもしれませんが、緩和ケアは決して終末期の患者さんのみが対象ではありません。「診断時から」「がんじゃなくても」治療・療養中の患者さんの身体の痛みや心の辛さを和らげるような関わりが緩和ケアです。
2019年10月から緩和ケア専従医の鈴木医師が着任し、緩和ケア外来が開設されました。今後、緩和ケア病棟が開棟予定となっており、今まさにその準備に追われています。ゼロからの出発となりますが、新しいスタッフの皆さんと共に患者さんの利益となるような病棟に、そして働きやすい病棟となるよう、コミュニケーションを密にとり合いながら頑張っていきたいと思います。多職種で力を合わせてより良い方法を模索し、見出していきたいと思っております。
患者さんおひとりおひとりが、療養中であっても「その人らしさ」を維持できるような関わりができたらと考えています。